税務調査の事前通知を受けた場合、迅速かつ冷静に準備を進めることが重要です。
事前通知は通常、調査日程や調査内容に関する概要が伝えられ、納税者に調査準備の機会を与えます。本コラムでは、事前通知を受け取った際の対処法を順を追って解説します。
税務調査の事前通知とは
日本において、税務調査は原則として事前通知されます。これには、「国税通則法第74条の9」に基づくものです。
例外として、無通知での調査(強制調査、無予告調査)もありますが、これは租税回避や重大な不正が疑われる場合などに限られます。
税務調査の事前通知について、個人事業主と法人で区分して説明します。
個人事業主の場合
個人事業主に対する税務調査では、調査の日時や場所に加えて、調査の範囲(所得税、消費税など)についても通知されます。通知内容には以下の情報が含まれます。
- 調査の目的と対象税目
- 調査対象期間
- 調査日程と場所
- 調査に必要な資料(帳簿、領収書など)
法人の場合
法人の税務調査も基本的には個人事業主と同じく事前通知されますが、対象範囲がより広くなることが多いです。特に、法人税や消費税、源泉所得税など複数の税目に対して調査が行われることが多く、必要な資料も多岐にわたります。通知内容には、以下の情報が含まれることが多いです。
- 調査の目的と対象税目(法人税、消費税、源泉徴収税など)
- 調査対象期間(通常は3年間)
- 調査日程と場所
- 必要な資料(決算書、納税申告書、契約書、給与台帳など)
税務調査の事前通知を受けた際の対処法
① 調査日程を確認・調整
通知に記載されている調査予定日を確認し、その日程が不都合な場合は税務署に連絡し、日程の調整を依頼します。税理士の同席を希望する場合も、税理士とのスケジュールを確認しておく必要があります。
② 帳簿・証憑書類の整理
調査対象となる期間の帳簿や書類を整備し、調査官に提示する準備を進めます。特に注意すべきは、以下の点です。
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帳簿記録の確認:会計帳簿や仕訳帳の内容をもう一度確認し、記入漏れや不正確な部分がないかをチェックします。
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領収書や請求書などの証憑書類:全ての取引に対する適切な証拠書類(領収書、請求書、契約書等)が揃っているか確認し、不足している場合はその補完を試みます。
③ 税理士との打ち合わせ
税理士がいる場合は、税理士と事前に打ち合わせを行い、調査に対してどのように対応するか方針を確認します。特に、以下の点について議論しておくと良いでしょう。
- 調査対象の期間や内容についての整理
- 疑義がありそうな箇所の洗い出し
- 調査官への対応方法
④ 過去の申告内容の確認
税務調査では過去の申告内容が精査されるため、申告書の内容を事前に確認します。特に、経費の扱いや売上の計上に不明確な点がないか再確認することが重要です。
⑤ リスクの洗い出し
調査で問題になりそうな部分を洗い出し、どのように対応するか事前に考えておきます。万が一、誤りが発見された場合でも、適切に説明できる準備をしておくことで、調査中のトラブルを避けることができます。
まとめ
税務調査の事前通知を受けた際は、しっかりと準備を整え、冷静に対応することが重要です。不備があった場合でも、早めに対処することで大きなトラブルを避けられます。また、専門家である税理士と連携して、的確な対応を行うことで、調査を円滑に進めることが可能です。
次回コラムでは、事前通知を受けた後、対応のまずさから不利になった場合の事例を紹介し、それについての対処法をご紹介します。