新たに創業し、まずは個人事業者から始めて法人経営者にという事業計画をお考えの方は多いのではないでしょうか。
個人事業者から法人経営者に事業を発展していく過程で忘れてはいけないのが『税務』があるということです。
開業準備から税務面で適切に対処していくことで、節税や税務控除などのメリットを受けることができます。
本コラムでは、建設業に焦点を当て、個人事業者から法人成りするためのステップにおける税務的要素から企業の成長や節税について紹介したいと思います。
ステップ1 開業準備と初期段階
【目標と戦略】
開業準備と初期段階における目標は、
「最初のプロジェクトを成功させ、リピーターや口コミでの信頼を得る。」
ことです。
そのための戦略として、特に小規模な工事や改修工事から始め、施工品質や顧客対応に徹底的にこだわっていきましょう。
【開業準備と初期段階における税務的要素】
開業準備と初期段階における税務的要素には、以下があります。
① 青色申告の承認申請
開業初年度から青色申告を行うことで、事業主貸引当金の活用や65万円控除が適用可能になる。
② 必要経費の明確化
開業費や消耗品費、車両費用など、建設業特有の経費項目を適切に仕分けしておくことで、税務リスクの軽減になる。
ステップ2 事業の安定化
【目標と戦略】
事業の安定化の段階における目標は、
「一定の収益基盤を確保し、従業員を1人以上雇用して工期短縮や顧客対応の改善を図る。」
ことです。
そのための戦略としては、工期短縮や顧客対応力の向上、見積精度の向上により受注数を増加させ、現金流を安定化を行いましょう。
【事業の安定化の段階における税務的要素】
事業の安定化の段階における税務的要素には、以下があります。
① 従業員に対する社会保険の加入
法人成りを見据え、社会保険の支払準備を行います。特に、建設業では労災保険や雇用保険も必要。
② 減価償却の適用
工具や車両などの資産を減価償却に組み入れ、所得控除に役立てます。長期的には、法人成り後の資産引き継ぎも考慮します。
ステップ3 事業規模の拡大
【目標と戦略】
事業規模の拡大の段階における目標は、
「さらに大規模なプロジェクトを獲得し、年間売上を1,000万円超」
することです。
そのための戦略としては、他社との業務提携や資材の仕入れ先拡充により、事業を拡大し、管理能力を強化することです。
【事業規模の拡大の段階における税務的要素】
事業規模の拡大の段階における税務的要素には、以下があります。
① 消費税の課税事業者選択
売上が1,000万円を超えると消費税の課税事業者となるため、課税事業者選択届出を事前に検討する。
② 建設業許可取得の検討
工事規模や事業成長に応じ、法定工事金額を超える場合は建設業許可が必要となります。法人化後の申請コストを軽減するための事前準備を検討しましょう。
ステップ4 法人成りの準備
【目標と戦略】
ステップ4まで来ると、とうとう法人成りの準備の段階に入ります。
法人成りの準備の段階での目標は、
「事業が安定した収益を上げ、法人化のメリットがある状態になる。」
ことです。
そのための戦略としては、法人成りによる社会的信用の向上を狙い、法人化に伴う節税や資産管理の利点を最大限活用しましょう。
【法人成りの準備段階における税務的要素】
法人成りの準備段階における税務的要素には、以下があります。
① 法人化のメリット検討
法人にすることで所得分配や役員報酬による節税が可能になります。また、事業所得ではなく給与所得控除が適用されるため、税率の軽減が見込める。
② 法人設立時の節税対策
設立初年度の交際費、法人税法上の役員報酬の設定や福利厚生費の活用により、個人の所得税負担と法人税負担のバランスをとることができます。
ステップ5 法人化後の運営
【目標と戦略】
法人成りのステップにより個人事業主から法人経営者になった後は、法人化後の運営の段階に入ります。この段階における目標は、
「法人としてさらなる発展を目指し、資金調達やM&Aなどを視野に入れる。」
ことです。
そのための戦略としては、建設業の許可を活かし、民間や公共工事の受注範囲を広げ、持続的な成長を図りましょう。
【法人化後の運営の段階における税務的要素】
法人化後の運営の段階における税務的要素には、以下があります。
① 役員報酬の見直し
役員報酬を毎年見直すことで、法人税および所得税の負担を最適化します。
② 利益準備金と留保金の活用
一定額を留保することで、将来の投資や設備導入に備え、資金効率を最大化にします。
まとめ
個人事業者から法人経営者になる法人成りには、以上のような1から5のステップを経ることになります。
以下に5つのステップの中でも重要な内容についてまとめました。
- 初期段階で青色申告や必要経費の整理を行い、経費管理に力を入れる。
- 安定化段階で労働力の確保と社会保険の導入を準備し、消費税対応も検討する。
- 拡大段階では建設業許可取得や、法人成りの節税効果を分析。
- 法人成りのタイミングを見極め、法人化後は役員報酬や利益留保などの管理を強化する。
このステップを経ることで、建設業の個人事業者は安定した成長と節税を図りながら、円滑な法人成りを目指していきましょう!